「気持ちだけじゃだめなの。以心伝心じゃだめな時があるの。言葉が必要なの。どうしても言わなければならない言葉というのがあるの。でも、言えないのよ！」

　こんな言葉が心に残る、私のベストお勧め本です。
読後感は非常にさわやかという言葉がぴったり。

　小説なんだけど、作り事っぽさを感じさせず、登場人物も隣にいる人たちのように親近感を感じます。

　あらすじです。

　落語家の卵、主人公、三つ葉の元に、話すことが苦手な人たちが集まってきました。その人たちに落語を教えることになるのですが、みんな、心に悩みをかかえていて、それが原因で喋れないことに、三つ葉は気がつきますが。

　登場人物はみんな一癖も、二癖もある個性豊かな人たちばかり。
　
　三つ葉の従弟で、テニススクールのコーチの良。良は大勢の人の前に出ると、吃音が出てしまう気弱な人物。
　傷つくのが怖くて、無愛想な仮面をかぶっている美女、十河五月。
　大阪弁を喋るので、いじめにあっている小学生の優。
　本来は毒舌なのに、人がどう思うかを気にし過ぎて、自由に喋れない野球解説者の湯河原太一 。

　落語を教えていくうちに、それぞれが関わりあって、自分で自分のコンプレックスを解決しようと、頑張り始めます。
　読み終わった後、「良かった、良かった」と数回うなずいてしまいました。

　誰もが心に何かを抱えている。それでも頑張って生きていくんだって思わせる、本当に爽やかな本です。